日本語ラップと韻 その2:キングギドラ『空からの力』の影響力

日本語ライムの一大ターニングポイント
〜未確認飛行物体の空からの力〜


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日本語ラップの世界に限った話ではないが、
強烈なインパクトを持った一つの作品がその後の時流を規定してしまうということがある。

そして、日本語ラップにおけるライミングに関して言えば、
その「たった一つの作品」のうちの一つは、95年にリリースされた『空からの力』だ。
キングギドラのZEEBRAとK DUB SHINEの2MCは、
卓越したライミングのテクニックで多くのファンやフォロワーを生み出した。

この押韻重視のアティチュードは勿論リリックでも表現されており、
「何人のラッパーがちゃんと韻踏んでるのか数えてみよう」や、
「悲しくなるお前のライム甘くて(共に"大掃除"ZEBBRAバース)」などの部分に特に顕著である。



同時に「韻辞典は禁じ手("見まわそう"より)」と明言して敷居を高くすることで、
自らの成し遂げた押韻術の地位を絶対的なものへと押し上げた。
「お前らやれるもんなら同じようにやってみろよ、簡単じゃないぜ」ということである。
以上諸々ひっくるめて、ライミングの巧みさをセルフボースティングとしても用いた、
最も効果的で最も早かったケースだと言える。

そして、この作品をきっかけにZEEBRAが徐々にシーンの中心人物となっていくと同時に、
「韻を踏んでなけりゃラップじゃねぇ」という空気がより強くシーンを支配するようになる。

極端なライム偏愛者に至っては、あのBUDDHA BRANDやTWIGYでさえ
ワックMC論争の槍玉に挙げるほどだったから、今振り返ると異常なシーンだったかもしれない。
ただ、当時は韻をタイトに、ハードに踏むことは紛れもなく「正義」だったのである。

(備考)
誤解のないように補足しておくと、
キングギドラ以前には韻を意識的に踏むラッパーがいなかったという訳ではない。
重要なのは、その水準を高め洗練したこと。
それまでは二文字〜四文字での押韻が平均点/及第点だった[※]ところを
レトリックの巧みさも交えながら六文字以上での押韻をも披露した。
また、子音の置き換えの多さという観点では、
当時のK DUB SHINEのレベルは群を抜いていたと言って良いだろう。

※これは完全な感覚値としての話だが、あながち大外れでもないと思う。
 裏を取る作業として同じ時代の作品のリリックの分析を行うことも出来るが今回は割愛。




【次回】
日本語ラップと韻 [余談]:クルー別ライムスタイルの傾向と対策

→ 14日(日)更新予定!



by nihongo_rap | 2013-04-10 21:22 | 日本語ラップと韻

主に90年代~00年代前半の日本語ラップについて


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